真留句はこう言った

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真留句はこう言った コロナ以前-15B 人生三分の計つづき 子供の教育費 Ante coronam

この文章はコロナ以前− 15A人生三分の計の続きです。

 

真留句がここまで言い終えると、長三が次のように言った;

 

長三「あなたの言われる人生三分の計、そして半ZXは、このご時世に有効なライフスタイルのように私にも思われる。

 確かに、まともに働いても馬鹿を見るように私も肌で感じている。世の他の人々もそうであろう。正当な労働の対価も得られない賃金。そして、なけなし賃金を苦労して貯めた貯蓄すらもさらにインフレによって、かすめ取られるのだから。しかも労働やマイカー通勤が地球温暖化、異常気象発生の手助けをしているのだから、このままのライフスタイルを変えるべきなのはもっともなことに思える。

 だが、しかし、私には家族が、子供がいるのです。真留句よ、あなたのように独り身ならばいざ知らず、家族が、子供がいる者には人生三分の計や半ZXのライフスタイルは無理ではあるまいか?

 子供を育て、多少なりともマシな生活を送らせるために大学に入れてやるには、多額の教育費が必要なのです。我々のように困窮した人生ではなく、社会で良いポジションにつかせるためには、良い大学を卒業させ、良い企業に就職させねばなりません。繰り返します、多額の教育費が必要なのです。

 あなたの人生三分の計や半ZXのライフスタイルでは収入が少なすぎて、教育費を貯めることはできないでしょう。」

 

長三がこう言うと、真留句は答えた。

 

真留句「家庭を持つ者にとって、人生三分の計は、あなたのおっしゃるように、その収入の少なさ故に採用し難いと思うのはもっともであろう。

 しかし、私は気にせずに子を産み育てられよ、そして経済力の無さ故に結婚や婚活を躊躇しているカップルがいたならば、結婚し家庭を築かれよ、と申し上げたい。

 その理由をお話しましょう;

 現在、教育費、即ち、子供の教育にお金をかけるのはコスパが悪くなりつつあります。確かに私達の親の世代や団塊世代でしたら、大学卒というのは社会を生きる上で極めて有効なチケット、武器になりました。大卒、優良企業就職が人生の有効戦略であった訳です。

 ところがその子供世代になると、その有効性は減ってしまいました。大卒でも職に就けない氷河期時代もありました。

 親が子供に良い人生を送らせたいと思い、自分の時代の有効戦略を子供に施そうとするのはもっともなことです。しかし、その子供達が大人になる頃には親の頃の人生有効戦略は時代遅れになって通用しないようです。最近は時代の流れが速く、スピードの時代とも言われますし、そのせいかも知れません。

 今後も、教育にお金をかけるコスパはもっと悪くなって行くでしょう;

 以下に述べる理由から個人の技能や能力が企業において無意味、無価値になってくるからです;

 企業はなるべく個人の能力や技能に頼らずに、会社を運営できるように会社のシステムを作って行きます。職人や特定の個人の能力に頼ると、その人々に高い賃金を支払わねばなりません。会社を運営、営業するにあたって、誰とでも代替の効く仕事、誰でもいい仕事、そういうものをなるべく増やすように会社のシステムを構築します。その方が求人も楽ですし、人件費のコストも下げることが出来ます。それは労働者側からすると、生きがい、労働者としての自分の価値と賃金の低下、ということになるのですが。

 また、話題のAI技術、これも会社における個人の知的能力をある程度、無価値にしてしまいます。このことに関しては、次の類比を考えられるとよろしいでしょう;

 古においては、力持ちの男性というのは、現在よりも、もっと重用され尊敬されていたことでしょう。しかしながら、重機の登場によって、力自慢はそれまでほどには、珍重されなくなりました。力の世界において重機がもたらしたことと同様のことを、知の世界においてAI技術は引き起こすことでしょう。AI技術は知の世界の重機のようなものになるでしょう。(※とはいえ、現在でもある局面では力が物をいうように、将来も部分的な局面では知能が物をいうでしょう。)

 以上のことから、会社、労働市場における個人の技能、能力の無価値化が進み、大卒だろうが、中卒だろうが、うちの会社のシステムにとっては誰でも同じ、誰でもいい。そんな仕事が95%以上を占めるようになるのではないでしょうか。

 ですから、子供の教育費には多額の現金をかける必要はない、と言ってよろしいかと思われます。

 

 将来はかくの如く、誰でもできる、誰とでも代替可能なやりがいの無い低賃金な仕事が95%以上になることでしょう。

 人生三分の計でその仕事(アルバイト?)で最低限の生活費を確保して、自らの使命たるXや農業、芸術、家族との団欒を、自らが納得できる時間を、人生を、この防御ラインで死守するのです。」

 

真留句のこの回答に長三はさらに尋ねた。

 

長三「あなたの答えはけっこう納得できる。それでも、私には子供の教育が必要なように思われる。あなたがおっしゃったのは将来、子供に学歴が必要ない、学歴を得るコスパが悪い、あるいは、会社で働くにあたって、即ち労働者、労働力商品として知性、技能は無価値になる、とおっしゃてるようだ。しかし、何らかの本質的な教育が必要なのではないのですか?」

 

真「あなたのおっしゃる通りです。私も子供が今後、生きていくための技能、生活するための知性、技能を身につけさせる、といった教育の本質的な部分は必要だと思われます。」

 

長「それは、どのようにすればよろしいのか?」

 

真「昔のライフスタイルを参考にしなさい。昔は子は親から生きる術を伝授されました。親である、あなた自らが子を教え育てるのです。また職人の徒弟性というのも、優れた教育法と私には思われます。

 現金で解決、取引するあらゆる分野は、農、衣、食、住、芸術、教育は、経済競争にさらされ、効率性や商業主義の名の下にその質は低下しつつあります。経済性故に教育者となった者、あるいは、真に教育を志す者も、現在の学校のシステムのために、その力を余すことなく発揮できない環境にあります、そのような教育制度に子を任せるのは得策ではなくなりつつあります。

 あなた方にはお金で教育するのではなく、自らの手間によって、即ちDIYと言ってもよろしいでしょう、それらで子を育てるのです。自らがまさしく子を育てるのです。現在、学校が担っている学問の分野においても。

 自らの農作業、あるいは労働、芸術に浸る姿、いろんなこと(家事、自炊など)をDIYで行う姿を子に見せ、そして子にも手伝わせ、あなた自身の生き方を渡し継ぐのです。

 また現代はインターネットで調べることであらゆることがDIYし易くなっています。教育、学問に関してもあなたご自身や子自身がインターネットで調べ自ら学べばよろしい。

 

 あなた方がもし、このまま、お金で教育費で子供の良い人生を確保しようと苦しみながら会社で働くならば、あなた方の子もきっとあなた方と同じ道をたどり、そして、子の子たるあなた方の孫も、同じ道をたどるでしょう。あなた方の一族はそうして、お金を介して見えざる【資本主義社会における王】にお金を貢ぎながら生きてゆくことになりましょう。 

 

 さあ、ここで鎖を断ち切るのです。生きてゆくには最低限以上のお金は要りません。

 

 さあ、お金ゆえ生活に困窮する者も、臆することなく恋をし、婚活し、結婚し、子を産み、育て、家庭を築かれよ、戦前の多産であった昔のライフスタイルを真似られよ。」

 

真留句はこのように言った。